月が見える日

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そんなわけがない。 ある筈がない。 お試しだと提案したのは俺だけど、乗ったのはいろちゃんだ。 遊び、なんだろうか。 今まで付き合った子はあれこれ求めた。 それが煩わしく、とっかえひっかえしていた自覚はあった。 でも、これは遊びなのかどうなのか、よく分からなかった。 「いろちゃん。好きだよ。」 愛しく思う。 彼は何処か危なくて、見ていないと知らぬ所で死んでしまうかもしれない。 消えてしまうかもしれない。 それだけは嫌で、消えてほしくない、死んでほしくないと腕の中に閉じ込めた。 俺は、恋人として「好き」だと迷わず答えるだろう。 じゃあ、志村いろはを「好き」かと聞かれれば、迷わず「好き」だと言えるか分からない。 いろちゃんを嫌っているわけではない。 断じてそれはない。 だけども、俺はいろちゃんを利用していることに過ぎなくて、ただその負い目から好きだと暗示をかけているのかもしれない。 自分の気持ちがよく分からない。
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