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そんなわけがない。
ある筈がない。
お試しだと提案したのは俺だけど、乗ったのはいろちゃんだ。
遊び、なんだろうか。
今まで付き合った子はあれこれ求めた。
それが煩わしく、とっかえひっかえしていた自覚はあった。
でも、これは遊びなのかどうなのか、よく分からなかった。
「いろちゃん。好きだよ。」
愛しく思う。
彼は何処か危なくて、見ていないと知らぬ所で死んでしまうかもしれない。
消えてしまうかもしれない。
それだけは嫌で、消えてほしくない、死んでほしくないと腕の中に閉じ込めた。
俺は、恋人として「好き」だと迷わず答えるだろう。
じゃあ、志村いろはを「好き」かと聞かれれば、迷わず「好き」だと言えるか分からない。
いろちゃんを嫌っているわけではない。
断じてそれはない。
だけども、俺はいろちゃんを利用していることに過ぎなくて、ただその負い目から好きだと暗示をかけているのかもしれない。
自分の気持ちがよく分からない。
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