月が見える日

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いろちゃんをベッドに寝かせると、電話をかけた。 『何の用だ。』 「見つけたよ。あの子。」 『は……?』 驚きを隠さない将貴につい、堪えきれなくて噴き出した。 『おい、笑ってないで詳しく言え。というか、見つけたって……。』 「そのまんまだよ。貰っていいよね?元々そういう約束だったでしょ?」 『……ふざけんなよ。』 「ふざけてないしー?約束は約束じゃん。見つけた方が先に告ろうって。忘れた?」 押し黙った将貴は怒りを鎮めようとしているのだろうか。 何処までも冷静でいようとしている、それは悪いとは言わないけど、そこで躊躇するから何も手に入れられないんだよ。 『ーーーー誰だ。』 ぐっと色々な感情を殺している声音にからからと笑う。 「誰だろうねー?じゃあ、そゆことでー。」 将貴が怒っていることを電話越しに聞きながら、ごめんと音には出さずそのまま切った。 「俺じゃ、きっといろちゃんを傷つけるからさー。将貴、頼むから気づいてね。」 電源を落としたスマホの画面を眺め、幼なじみに希望を託した。
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