夢の中なら

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遠くなっていく意識の中で必死に抵抗するが、その抵抗も虚しく、月子が次に目を開けた時に写ったのは自室の白い天井だった。 傍らでは目覚まし時計が、うるさく鳴り響いている。 (あーあ、もっと航といたかったなぁ。あの夢の中に住めればいいのに) 月子はそんなことを思いながら鳴っていた目覚まし時計を止めて、ベッドから起き上がる。 そしてだるそうに学校に行く準備を始めた。 「月子早くしなさい!遅刻するわよ!」 「分かってる!」 1階から聞こえてくる母親の声に返事をし、慌てて部屋を出る。 「航、行ってきます!」 月子は壁に貼ってあるポスターに話しかける。夢の中で付き合っていた同級生の航は、現実世界では月子が大ファンの人気アイドルだ。 もちろんテレビや雑誌で眺めるだけで、会ったことなどない。 (あの夢、よく見るけど本当に良い世界だなー。あっちが現実世界ならいいのに) 月子はしぶとくそう思いながら、学校へ向かう。 そして教室へ着くと、同級生の誰とも挨拶を交わすことなく、静かに自分の席に座る。 そしてふと、教室の窓にうつる自分の姿を見て、大きなため息をついた。 (夢の世界みたいに可愛い私なら、友達できるのになー) 月子はいじめられてるという訳では無いが、学校に友達が1人もいない。 外見も大きめのメガネに前髪が重めに切りそろえられた黒髪で、お世辞にも可愛いとは言えない。 おまけに引っ込み思案な性格で、最初の段階で友達を作り損ねてしまい、そのまま現在に至る。 現実世界の月子は学校生活が退屈で、アイドルの航を追いかけるだけが生き甲斐のつまらない女子高生だった。 もっと変わりたい。でも変われないし、変わらない。 そんな現実に葛藤しながら、月子は時々見る夢の世界でのキラキラな高校生活に、憧れを募らせていった。
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