初心者

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初心者

鈴木さんの向かい側、先ほどまで小森さんの座っていた席に俺は座り、小森さんは俺の右隣で変わった形の時計をつついている。 入部する気はないけど、先輩たちの目の前で黙って気まずい時間を過ごすのはしんどいし、暇潰し位にはなるだろう。 俺は小森さんとの間にある将棋盤と駒の入った安っぽい箱を見つめる。てっきり木の盤でやるのかと思ったが、ぺらぺらのゴム盤でやるようだ。しかし、ゴム盤に描かれた9×9マスの線はしっかりと見てとれるが、箱は墨も消えかけて100均で売ってるんじゃないかと言うような貧相さだ。 水無瀬が部費を欲しがる訳だな。 鈴木さんはメガネの位置をくいっと直すと将棋盤の上に箱からザラッ、と駒を出した。 「取り敢えず駒の並びは知ってる?」 「はい。あと、多少の動かし方なら」 「ほぼ初心者だね。取り敢えず並べてみてくれる?」 駒は箱に負けず劣らずの貧相さで字は彫り込まれず、書かれただけの墨も箱同様消えかけている。 鈴木さんが駒を並べ始めたので俺も同じように配置する。 ぱちん、ぱちん、と駒と盤の擦れる音が意外と心地好い。     
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