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「相手から取った駒って自分のものになるんですよね。其れを置いた瞬間は?」
「置いた瞬間は"成れ"ない。歩は歩のまま、銀は銀のままだよ。次の自分の番で成れるけど、成った後は元の桂馬や銀に戻れないから注意してね」
「金の方が優秀そうに見えるけど、困ることあるんですか?」
「場合によるね。大抵は金に成るけど、条件次第で香車や桂馬は成らない方が有利だったりする」
「奥が深いだろ?」
横からずいっ、と小森さんが顔をだす。
「細かくルールを言うと禁じ手って言うやったら即負けの反則も有るけど、それはまた今度な。あと持ち時間も設定したぜ。鈴木が5分、室伏が20分」
かたん、と軽い音を立てて小森さんは俺の右隣に時計を置く。
「サンキュー。けど、時間差厳しくね?」
「このくらいのハンデは必要に決まってんだろ、バーカ」
「この時計何ですか?」
先ほどまで小森さんがつついてた時計は妙な形をしている。
長方形で真ん中に黒い線が引かれ、それを境に左右に普通の時計のように数字と目盛り、短針と長針があるけど、秒針はない。何より妙なのは上に1センチほどの高さのボタンのような物と、12の目盛りのところに赤い旗があることだ。
「対局時計。これでお互いの持ち時間を決めて対局すんの」
「これ、動いてませんけど?」
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