関わり

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それでも、もう少し頑張るか、と思ったところで教室の後ろ側の扉を開く音がした。試験中に大っぴらに見ることも出来ないので、俺はちらりと視線だけを巡らせると、真っ白な女の子が居た。彼女は頭と肩に雪を積もらせて、学生カバンを肩から下げていた。可愛らしい顔を蒼白くして浅く息を繰り返している。これだけ寒いのだから当然だろう、と思いながらもあまりにも寒々しい姿に俺は身震いすると腕を抱き込んだ。 ちらりと黒板を見つめると、20分までの遅刻なら受験は可能だと書いてある。 ギリギリセーフ。 彼女がカバンから筆箱を取り出したところで俺はもう一度白い部分の多い解答用紙を見つめた。 彼女の入室から10分程経って、突然ガタン、と……いやガシャーン、と大きな音がした。 思わず振り返れば教室中の視線が一つに集まった。その先にはさっきの女の子。白かった顔が赤くなって机と椅子を巻き込んで倒れていた。後ろに居た先生たちが駆け寄り、大丈夫ですから前を向いてください、テストに集中してください、と言う教卓の前にいる先生の声で皆テストに集中した。 視界の端に映るあの子は意識がないようで、先生に抱えられて何処か(きっと保健室だろう)に連れて行かれた。 休憩時間になって、さっきの子はきっと落ちただろうな、という囁き声がそこここで聞こえていたし、俺自身もきっと落ちただろうな、と思った。 だから入学したその日に同じ学校、同じ教室に居ることに当然驚いた。窓際の一番前、俺の目の前の席に座っていたのだ。 彼女は三教科と面接の内、数学を10分受けただけで合格した。 だから俺の中で彼女……水無瀬遊莉のイメージは「頭がよく病弱な女の子」だった。     
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