勧誘

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「お互い持ち時間を決めて管理する為の時計のこと。これが安くても二千円はするし、アナログ時計は一万円位するの」 「……一万円?」 驚いた。 一万円と言えば俺の小遣い二ヶ月分だ。 水無瀬はこくこくと頷くと真剣な顔で俺を見つめた。 「同好会だと部費が一万円だけど、部活動として認められると、最低五万円に引き上げられるの。今、私を含めて四人集まってる。あと一人の名誉ある役目を引き受けてくれない?」 真剣になる理由は分かった。確かに上手になるためには参考書のような物も必要だろうし、他にも俺が知らないだけで必要な物もたくさんあるんだろう。 しかし、 「別に名誉はないだろ。つーか、これ、何で駒が変な並びでマスも少ないの?」 あぁ、と水無瀬は声を上げると軽く絵(のような駒の描かれたマス)を指差した。 「これは詰め将棋っていう、王手の連続で王将を詰めるパズルゲームみたいなもの」 「何の役にたつの?」 「終盤の力を磨くの。これが出来ないと、途中どれだけ有利に進んでいても王将に逃げられて逆転負けするケースが多いの」 「ふぅん」 将棋に興味はないけど、この詰め将棋とやらは気になる。 「これって正解したら賞品あるの?」 「これだとないけど、入部してくれたらあるよ」 「一応聞くけど、何?」 「ジュース奢るよ」     
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