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入部
この学校の中庭は陽当たりもよく、風の通りも良いので何人かの運動部員が水筒やペットボトルを片手に壁に凭れて屯している。走り込みでもしたのか、汗だくの彼ら(女子は一人もいない)の横を通り抜けると、目的地である自販機にたどり着いた。
水無瀬が硬貨を入れてボタンを押すとガコンッ、と重い音を立てて自販機から500mlの赤い缶が出てきた。俺が取り出し、プルタブを開けて飲む間に水無瀬は更に三本のコーラを購入した。二本をカバンに押し込むと、振り返って俺を見る。
「それじゃ、行こうか室伏くん」
一本のコーラを左手で差し出して、右手で東校舎の隅を指す。いまいち何を言いたいのか分からず首を傾けると、ぐいっと俺の空いた左手に缶を受け取らせる。
「コーラは二本の約束でしょう?あと入部届け。書いて貰わないと困るし、部室に有るから一緒に行こう」
そういえばそうだった。コーラを貰ったら部活の事なんて忘れてた。
「部室って何処?」
「二階の物理教室」
体力のない俺はあまり遠くない場所なので少しほっとした。
先を行く水無瀬の少し後ろを着いて行き、教室の手前で二人でスリッパに履き替える。
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