入部

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基本的に廊下も教室も土足可の学校なので、スリッパに履き替える教室は珍しい。水無瀬の足元をふと見ると、足のサイズが全く合わず、ぶかぶかだった。男子のサイズに合わせているので仕方ないが、少し女らしさのようなものを感じる。 「お疲れ様でーす」 からからと引き戸を開けながら声を上げる水無瀬に合わせて俺も小さな声で「お疲れ様です」と声を上げる。 教室の奥には二人の男子が白い長机に向かい合わせで座り、うつ向いて何かを見つめているが、遠くて何を見てるのかよく分からない。ぱたぱたと小さな足音を立てる水無瀬にそっと着いて行くと、二人は将棋盤を見つめている……と思ったが、見ていたのは自動車のカタログだった。 「先輩、お疲れ様です」 水無瀬がもう一度声をかけると、二人は驚いたように肩を跳ねて水無瀬を見上げた。ひょろりと背が高くて涼しげな、というよりキツイ目付きのさっぱりしたヤンキーっぽいイケメンと、メガネをかけて如何にも秀才といったかんじなのに褐色の肌でスポーツも出来そうな男。 イケメンはふぅ、と息を吐いた。 「びっくりさせんなよ、水無瀬。あと、おつかれ」 「入口でも声をかけたのに気づかない方が悪いんですよ。あと、将棋もせずに何やってんですか?小森部長」 この人が部長か、としげしげと見つめる。 てっきりメガネくんが部長かと思った。将棋強い人って頭良さそうだし、メガネかけてそうなイメージだから。     
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