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『おいおいしっかりしてくれよ。会社から保険も降りているだろ。お前がもし眠ったりしたら、責任問題で俺まで処罰されかねん』
口では自分の身を按じるような言葉を吐きながら、本心では部下にも気を遣ってくれる良い上司だ。
そんな上司を裏切って睡眠を取ってしまった罪悪感に駆られながらも、俺は眠っていたのを悟られまいと話を切り出す。
「それでどうかしましたか?」
『ああ。実は、明日には撤収してもらう予定だったんだがな。睡眠チップを製造してる犯罪者の寝床が判明した。上からの命令で早急にそいつの身柄を確保して貰いたい』
「? それほどの相手なら民間会社じゃなくて政府に任せるのが道義では?」
『そうするとうちには何の分前も入ってこないだろ?』
成る程。上層部はチップを製造している親玉を確保して、政府に売り渡すのが目的らしい。
もしくは睡眠誘発チップを押収して裏組織相手に売買するのが目的なのかもしれない。
どちらにしても俺に断る権利はない。
早々に通話を切ると、俺は身なりを整えてアパートを後にした。
部屋を出る直前に見た鏡に写った自分の顔色が随分と良くなっていることが少し気になりはしたが、別段心に留めることなく俺は指定された場所へと歩いて行く。
指定された犯罪者の本拠地はとても潜入しやすい場所にあった。
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