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アパートからも近い、貧困街の廃ビルの地下施設。
周りに居るのは生気の失った浮浪者ばかりで見張りは1人も居らず、簡単に地下へと足を踏み入れることができた。
日の光が遠下がっていくのに反比例して地下施設に備え付けられた薄暗い電灯の光が辺りを照らし始める。
日の当たる場所から一度暗闇に入り、また光を追い求めて歩き続ける光景に妙な既視感を感じたのは、きっとあの夢のせいだろう。
夢というものにはこれから起こる出来事の予言である説もあるという話だが、もしや第三者として己自身を眺めていたあの夢の正体は現状を予知していたのだろうか。
馬鹿なことを考えている。内心自分を卑下しながら、俺は歩みを止めずに最下層へと降りていく。
地下施設の最下層。薄暗く、青い電灯の光のみで照らされた其処に広がっていたのは、広い空間に無数に転がされた人間の数々。
否、彼らは何も無造作に床に転がされていたわけではない。
1人1人が専用の容器に入れられて、様々な器具を身体の節々に装着されながら培養液の中で浮かんでいたのだ。
異様な光景だった。あの夢よりも遥かに異常。
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