踊り子の夢

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踊り子の夢

 冷たい車内から出るとぬるい風が頬を撫でた。顔の汗を拭うと伸びてきた髭がざり、と鳴った。職場で夜を明かすのはこれで3度目だ。重たい体内とは反対に目は変に冴えている。スマホを確認する。8:02。ああ、もう開いてるなと思いながら阿佐ヶ谷駅を出た。  15分ほど歩くと見えて来た。最近知った喫茶店。扉を開けるとちりん、と控えめにベルが鳴った。 「いらっしゃいませ。一名様ですか」  落ち着いた声が響く。なんだか眠そうだ。俺が眠いからそう思うのか。はい、と返事をして思い出す。 「窓辺の席でお願いします」 「はい、どうぞ」  壁沿いに3つあるボックス席。一番奥の席に通された。真っ白い壁は傷一つない。注文は決めているけどとりあえずメニューを眺めた。眠たげなウエイトレスがお冷を持ってくる。 「ご注文はお決まりですか」 「あ、はいブレンドティーと―― 」  帰ったらすぐ寝るから食べ物はやめておこう。 「踊り子の夢で」 「かしこまりました」     
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