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母子家庭でけして裕福ではなかった。
必死に働き私を大学まで行かせてくれた母。
やっと卒業しこれからは私が楽させてあげようと思っていた矢先だったのに...。
そんな母が高い貴金属を持っていたことが不思議だった。
『火元は野垣さんの家からで、火の不始末の線で調べてます。煙草か何かの火が点いたままうたた寝をした結果かと...』
「煙草か何か!?有り得ません!母は煙草なんか吸わないし、昔から火元には気を付けてましたから!」
『でも不審な点が今のところ...』
「ちゃんと調べて下さい!」
私の訴えもあまり聞き入れて貰えず、はっきりとしたことが分かり次第報せると言われ仕方なく警察署を出た。
未だ信じられない思いを残しアパートに帰ると...本当に何も無くなっていた。
黒く炭になった柱が数本立っているだけの...焼け地になっていた。
「取り敢えずうちにおいでよ?」
「うん...」
トッコがそう言ってくれ私はキャリーバッグ一つしかない荷物を手に力無く歩いた。
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