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3月2日
メモの住所の場所へ着くとレトロなレンガ造りのビルがあった。
その2階のドアに白いプレートで“香田弁護士事務所”と。
ノックの後ドアを開けしずしずと中へ入ると、私を待っていたのは電話の声同様60歳くらいのおじ様弁護士だった。
「初めまして、私はこういう者です」
差し出された名刺をまじまじと見る。
“香田弁護士事務所 香田守”と書いてあった。
「あのぅ、母の遺言書というのは本当にあるんですか?母がそんな物遺す理由が私には...」
「月代さんが亡くならなければ公開しないものですが、こんなに早く亡くなられたとなれば...早急に娘であるあなたに伝えねばと」
「母が亡くならなければ?ということは今でも母が生きていればその遺言は...」
「また違った意味で書き換えたかもしれません。ですが体が丈夫でなかった昨今の月代さんにとっては、いつ何時あるか分からない先のために一応と」
「はぁ...」
私は未だ事態が飲み込めず放心した。
おもむろにテーブルの上のリモコンを手に取るとテレビを点ける弁護士。
映し出された画面にここ数日流れ続けているニュースが目に入った。
私の視線を確認した香田弁護士は私に向き直りまた理解出来ない話をし始めた。
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