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母の遺言書の内容は以下の通りだった。
一つ、母が亡くなりし時点で大桜寺玄宗氏に連絡が行くこと。
一つ、それと同時に私こと野垣桃花の親権が玄宗氏に委ねられること。
一つ、玄宗氏に桃花の行く末を決める権利が与えられること。それは必ずしも桃花の幸せに値するものでなければならないこと。
たった3行の遺言
読ませて貰えた紙の字は正しく母の字で...これを書いた日付けは丁度2年前の私の誕生日、それが明日なのだ。
「母が私の誕生日にこれを?」
「はい。20歳の誕生日に新たに書き換えられました。それまでは先の2行のみでしたが、この時新たに3行目を追加して」
「...」
まじまじと母の遺言書を見つめても母の意図が分からなかった。
何故今まで父の存在を隠していたのか...いや嘘を付いていた。
私は母から父親は亡くなっていると聞いていたからだ。
なのに本当は生きていた、それも有名な財閥の総裁だなんて...。
信じられない情報ばかりが頭に飛び込んで来て答えなんか出るわけもなく...母が唯一残した鍵型のペンダントを私は握った。
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