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“コンコン”
桃花たちの集まる応接室?というには広過ぎる部屋に高めのノック音が響く。
苛立たしげに正孝が“入れ”と言うと、扉から入って来たのは長身の女性だった。
艶やかな黒髪を夜会巻きに結い上げ、タイトなスーツに身を包み、細く長く伸びた脚が色っぽく覗くスカートには際どいスリットが左側に切れ込んでいた。
どこから見ても妖艶で美しい女性...女の色香が咲き誇る20代後半であろう女は桃花の瞳に憧れを抱かせるほど輝いて見えた。
(凄い綺麗な女...)
長い睫毛を震わせ正孝の元まで歩み寄ると手帳を広げた。
「社長、今日予定していた全てのアポは延期しました。それと本日夜○○先生との会食予定ですが、先方の都合で翌週の同曜日に変更したいと」
「ふん。また延期か...何かと理由ばかり付けて先延ばししやがって!まぁ仕方ない、分かったと伝えろ。
それと父さんの葬儀の準備は頼んだぞ?」
「はい。では失礼します」
端的に用件を済ませ一礼した女性が一瞬私を見、何も言わず退室していった。
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