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 ガリレオには一番乗りだった。エントランスには巨大な窓が疑似的に映し出され、圧倒的スケールで木星が映し出されている。ガスにより希薄な「輪」が形作られ、木星の輪郭はぼやけていた。将来的には無尽蔵に近いガス資源を採掘できないか、という議論も真剣に取り組まれている。しかし木星と地球間を往復し資源を運ぶのであれば、それこそかなりの時間が掛かってしまうため、私個人としては当分先のことだろうと予測していた。  リアルタイムでは一秒にも満たない間に、次々と観測者達が姿を現した。彼らは自らを天文学者と自称し、遥かかなたのフロンティアに目を向けては自分の名声を広めるダイアモンドを探して躍起になっている。というのも三年ほど前に偶然にもあるアマチュアが一つの惑星を発見した。それは地球環境とほぼ一致しており、2015年に発見されたケプラー452bよりも地球環境に似ている。  そのアマチュアはネット動画番組を中心に引っ張りだことなり、一時期誰もが知る著名人の一人となった。今の世間はその名前も忘れてしまっただろうが、私は今でも覚えている。なぜなら、それが他ならぬ私自身だったからだ。  メディアに出ても結局のところアマチュアで、求められるのは発見時の感想が主だった。詳しいことは真の専門家が答えるのが常だった。それでも労働の必要が無いほどの報酬金は貰えたし、こうして好きにフロンティアを眺める時間ができたから悪くはない。加えて調査船を送り込み、至近距離で発見した惑星を観測する計画がすでに発動しているが、私は第一発見者として観測に招待もされていたのだった。  調査船の名は「ヒスパニオーラ号」と呼ばれていた。火星衛星軌道上で停留し、現在はメンテナンスおよび物資の補給を行っている。他に三隻もの調査船が運用され「ピークォド号」「トーラン号」「ディスカバリー号」と呼称されていた。  全長300メートル前後の巨大な船であり、8機ものエンジンが備え付けられている。最大加速時には約10Gもの圧力がかかるが、通常ならばすべてのエンジンを同時に使用することはない。内部には衛星5基相当のコンピューターを搭載しており、長期間航行の記録と、データ化された人間の意識を、余裕をもって保存できるようになっている。他に無数のドロイドや、小型探査機、通信中継器を装備し、人類にとっての「宝島」を探すために作られた最新最高の船だった。
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