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店の中は、意外と広かった。壁には棚がたくさん置かれており、色とりどりの小瓶が並んでいる。
ふんわりと、甘いような、少し薬っぽいような匂いが漂っていた。
茜が店の中を見回していると、奥から女性が出てきた。
「いらっしゃいませ」
涼やかな綺麗な声をした女性は、見た目も美しかった。20代くらいの若い女性で、長い黒髪が目を引く。
この人が、おばあちゃんが生まれる前からお店やってるの?まさかね…。
恐くなってその考えを打ち消す。きっと、何代目かの娘さんなんだろうと、考えを改めた。
実家の家業を継ぐなんて、若いのに立派だな、怪しいお店だけど。などと考えていると、女性は店の真ん中にあるテーブルの椅子を引いた。
「どうぞ、おかけください」
にこやかに言われ、茜は慌てて椅子に座る。
「あの…突然すみません。こちらって、何のお店なんですか?香水のお店?」
店を訪ねておいて、なかなか失礼な質問だと自分でも思ったが、女性は気分を害した様子もなく、笑顔のまま答えてくれた。
「ここは紅魔法雑貨店。私は、店主の紅と申します。お客様は、何かお困りのことがあっていらしたんですね?」
紅魔法雑貨店の紅は、店主の名前だったのか、と店の謎は1つだけ解けたものの、未だ謎だらけである。
「そうなんですけど、何で私が困ってるってわかるんです?そんなに顔に出てますか?」
「ふふ。この店は、本当に困っている方にだけ、開かれる店なのですよ。この店に入ってきたということは、お客様が現在、とてもお困りだということなのです」
そんなことがあるのだろうか、と思ったが、茜が今現在困っていることは確かだった。
一瞬迷ったのち、意を決して茜は口を開いた。
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