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「…忘れないで下さいね。魔法を使って出会った人やもの、出来事には、極力関わって下さい。それだけが、魔法をお貸しするためのお約束ですので」
扉を開けようとしたとき、後ろから声がかかった。
茜はわかりました、とうなずき、店を後にした。
「…紅」
茜のいなくなった店内で、一匹の黒猫がそう紅に声をかけた。
「あら、どうしてそんなに恐い顔をしているのかしら」
紅は面白そうに黒猫を見つめる。
黒猫はうんざりしたような口調で続けた。
「あのような小娘に魔法を貸したりして、大丈夫なのか」
「大丈夫よ。このお店には、強い想いを持った人しか入れない。ここに入れたということは、それだけで資格があるということよ。きっと彼女なら、魔法を使いこなしてくれるわ」
優しい手で黒猫を撫でると、黒猫はふん、という様子で顔を背けた。
「…そうだと良いのだがな」
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