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「梶原君! 何か阿佐ヶ谷のマンションに住んでる住民からの連絡で、最近お隣さんの部屋をずっと見ているヤツがいるから何とかしてくれって苦情が来てるの! 今のところは害はないらしいんだけど、気味悪くてしょうがないからどうにかしてくれだって。今から一緒に私と来てくれない?」
黒髪でポニーテール。頭の後ろで髪をまとめスーツを着た女は、同じ事務所にいる20代の中頃に見える男に声をかけた。ポニーテールの女は、女性にしては身長が高く、170cmを越えている。
「マジっすか……最近多いっすね。新設されてから半年しかたってない部署なのにやる事多いなぁ」
梶原と呼ばれた男はうんざりした様子でしぶしぶ了承し、身支度を始める。事務所にはその時他に人は殆んどおらず、出払っているようだった。梶原は自分のデスクに広げていた資料を片づけ、座っていたオフィスチェアの腰掛部分ににかけていたスーツの上着を着なおす。
「しょうがないでしょ。必要だってことで新設された部署だし、今は同じような部署が沢山出来てどこも大忙しよ」
オフィスチェアから立ち上がり、女の横にトボトボと歩いてきた梶原はうーと声をあげる。並んで立つと二人の背は同じくらいになる。
「どこも忙しいってことは分かってるんすけど、それでもキツイことには変わりないっすよ船越さん……」
船越と呼ばれた女は、コルクボードにかけられていた車の鍵を手に取りながら頬を膨らませる。
「もうっそんな事ばっかり言っててもしょうがないでしょ! ほら仕事仕事!」
梶原の手を引っ張りながら車へ連れていく船越。煮え切らない態度の梶原に少し腹を立てながら車の助手席に乗せ、自分は運転席に座る。
「それにしてももう九月に入ってるって言うのにまだまだ熱いわね」
スーツの上着を脱ぎ、後ろのシートへ投げ入れた船越。その姿を見た梶原は急に眼を見開き、姿勢を正した。
「船越さん。俺ちょっと元気出たので頑張れそうです」
不意にかけられた言葉に、船越は不思議そうに梶原を見つめながら答えた。
「そ、そう? なら良かった」
スーツを脱いだ船越は下に半そでの白いワイシャツを着ており、汗に濡れたそのシャツは透けてピンクのブラが見えていた。
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