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「出来ればそれはしたくないっすね。特に人に害を与えるわけでもないのにこっちの都合だけで除去するっていうのは……」
梶原が何かに気づいたようにふっと霊の方へ向きなおる。どうしたのと問いかける船越にしっと指を立てる梶原。
「この霊、何か呟いてます」
耳をすませる梶原に、船越は眉をひそめる。
「そっか……梶原君には聞こえるんだもんね」
梶原の様子を察して口をつぐむ船越。梶原には聞こえ、船越には聞こえないその声を、梶原が聞き取るのを待つ。
しばらく待っていると、梶原は霊の声を聞き取ることが出来たようで、聞こえた声を船越に伝えた。
「ごめんねって言ってました。あと誰か人の名前を二人ほど。もしかしたら問いかけに反応するかもしれません」
「そう。もしかしたら今この霊が見てる部屋にいる住人のことかもしれない。三カ月前からこの霊は現れるようになったらしいんだけど、その頃に引っ越してきたのが霊が見てる部屋の住人らしいの。聞き込みしてみましょうか」
梶原はそうですねと返答し、霊の方を見ながら一言呟いた。
「しょうがないな。付き合ってやるよ」
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