4月の顔

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入学式。 とうとう憧れの都会の大学にやってきた。 熾烈な大学受験の末、ようやく第一志望校に合格することができた。 「えー?!あの大学目指してるの?言っちゃ悪いけど、正直、難しくない?」 志望校を教える度に何度こういった言葉を聞いただろう。 周りの反応を見る度に、やはり少しだけ心が揺らいだ。 たが、杞憂とはよそに、今俺はこの地に立てている。俺のことを見くびっていた奴は、自分に甘んじた挑戦しかできなかったことを恥じるがいい。 俺は、勝ったんだ! 周りを見渡す。 誰一人知り合いはいない。 家は一人暮らし。 ようやく、ようやくこれで自分の人生が生きられる!! 思えば勉強一筋の青春時代だった。 男子高校だったため、恋をすることもない。 それなりに友達はいたが、誰一人本音で話せる相手はいなかった。 毎日毎日くだらない話で盛り上がる同級生達にうんざりしていた。 そんな中、心の支えになったのはラジオだった。 若い頃、世界一周旅行をして語学が堪能なパーソナリティ。今もその時にできた友人と会ったりしているらしく、そのツテをもとにゲストとして世界各国のアーティストを招いていた。 「結果はあとからついてくる。今できることを精一杯やった後に振り向けばいいんだ」 くさいと思われるかもしれない。でもこの言葉に何度も救われてきた。 いつかこの人に会いたい。DJ MiNoRuさんに会いたい。 そして、自分がMiNoRuさんの言葉に励まされて辛い受験勉強を頑張ってこれたことを伝えたい。 きっと会えるはず。そう、東京にくればきっと・・・  これから始まる新品で囲まれた自分の大学生活に、心をはずませていた。
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