その大陸の大気圏には奇妙な黄色の浮遊物が浮いていた…

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タムタムという太古から続く太鼓の音が響く。 うっそうと茂る亜熱帯の巨大な植物。 その上空は黄色いもやのようなものが掛かっており、 ときおり響く轟音は、近くの火山が噴火したことを知らせていた。 「いやー頭痛がひどい。それもこれも私が逆さまなせいだね。うん。  ところで原住民のみなさん、いい加減私をほどいてはくれないかね?」 そう言うと、足元と腕を縄で縛られ、逆さまにされた男… モノクルの男、Dr.ハンガーは自分の身を軽く揺すってみせる。 しかしながらここの原住民…彼らの言葉で言えば「ロアッカ族」というのだが 彼らは現在重要な神儀による審議を行っていた。 ロアッカ族は区別をしない。 基本的に彼らの集落にやって来たものはみな彼らのものになる。 それは動物も植物も問わずである。 そして、集落に入ったものはみな神事による審議を行い、 ①丁重に祀られ外へと返されるか ②食料としてみんなの胃袋に収まるか ③唾棄すべき敵としてむごたらしい死を体験させるか のいずれかの方法を取るのが通例となっていた。 「…うーむ、ということが先ほどDr.ハンガーが集落の遺跡で発掘した  石版の文字で判明したが…これ、まずいんじゃないかのお。」 そう言うと、宇宙工学博士でサウザンド号の副船長である ユクユク・オウルは森林の中から顔を出し、ため息をついてみせた。 「…まあ、しかたがないさ。彼は言語学者で法学者だ。  自身の好奇心が抑えられなかったんだろう。」 そう言いつつ、光学迷彩服で周囲の景色に溶け込んだサウザンド号船長、 ハルバル・スバルは腕を組んでみせる。 「…というか、単に抜け駆けして遺跡の宝物をごっそり盗むつもり  だったんですわよあの男。それで原住民につかまるなんて、単に  年貢の収めどきとしか思えませんわ。」 そう言うと、宇宙船・サウザンド号に指令を出すための タブレットを操作する化学者のミス・リリーは頬に手を当ててみせる。 「…あら、ちょうど儀式も佳境に入るみたいですわ。」 そうして一同が見てみれば、原住民がひとつの土器のようなものを手にし、 その手にナイフのように鋭い尖った植物を持って突き立てようとしているのが見えた。
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