信号機は青だった

　そこの信号機は歩行者用の手押し式。向こうへ渡りたい時にボタンを押すというアレ。
　車通りはあまりないけれど、私は律儀にボタンを押して、信号が変わるのを待っていた。
　やっと変わった信号機。渡っている最中に前方不注意の車が突っ込んできた。
　運転していた当人は、いまだにバカらしい言い訳を口にするけれど、アタシはきっぱり断言できる。
　歩行者側の信号は青だった。
　警察もそれを証明してくれたでしょう？　新聞もニュースも、きちんとそれを世間に公表してくれたでしょう？
　それでもまだゴネるなら、納得するまで現場検証につき合うわよ。
　どうせお互い、もう死んでるもの。このままじゃ成仏はできそうにないから、きっと時間はたっぷりある。
　その長い長い時間を、ずっと、アタシはアンタの過失で死んだと訴え続けてあげる。
　生まれてまだほんの二十年程度。なのにこんなことで人生終了を余儀なくされた。
　当然恨んでるから、早く降参してあの世に行けばよかったと、思い知らせてあげるくらいの対応をしてあげる。

信号機は青だった…完