第二章:きっかけ

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宏次の胸の中にも優奈が宿ってしまっていた。 初恋の彼女に似ていたからでは決してない。 それは優奈に失礼というものだろう。 優奈を穴が開くほど見てしまったときから、宏次のこころはざわざわしだした。 (今のボクに、恋愛なんかしてる余裕なんかない。) と、何度も何度も打ち消して優奈をこころから追い出そうとするのだが、また戻ってきてしまう。 イベント会場での、お客さまに対する接客の仕方や笑顔。 占っているときの真剣な表情や、的確なアドバイス。 優奈の立ち振る舞い、全てが宏次のこころの中に入り込む。 それで用もないのに、自転車で何かを運んでみたり 用事があるかのように振る舞い会場内をうろうろしていた。 そしてそれとなく優奈を観察していた。 サングラスは便利だ。 自分の視線の先を見破られることがない。
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