第三章:宏次の状況

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ひとりが住むには大きい、一戸建ての家だった。 家の中は、宏次が出す物音以外何も音がない。 2階に3部屋あるが、そのどれにも電気が灯っていない。 宏次には離婚暦があった。 妻と子供は出て行ってしまい、この家の借金だけが残った。 いや、ふたを開けてみるとそれだけではなかった。 元、妻は大きな借金を残していたのだった。 子供の奨学金も使い果たしており、そのローンの返済にも追われた。 宏次はその金額に絶望し、贅沢品(ぜいたくひん)と思われるものは全て処分し 車も軽四にした。こんな片田舎では車は必需品だ。 しかし、バイクだけは唯一の宏次の気分転換だ。 借金を必死になって返す中で楽しみが何もないなんて、自殺しろと言われているようなもんだ。 その分、食費を減らすさ。 宏次は必死になって借金を返済していった。 完全返済にはあと25年の計画だ。 そのときのことを考えると気が滅入(めい)り、衝動的(しょうどうてき)に自殺しそうな気がするので先のことは考えないようにし、ひたすら目の前の数字だけを見て借金返済に追われた。 元、妻が作った借金だ。妻に返済させればいい。 兄弟は宏次にそうアドバイスをした。 だが、元、妻は持病があり働けない。実家に戻ったものの、その借金は親に言えないだろう。事実、妻の両親が宏次のところに怒鳴り込んできた。 「離婚の原因は借金を作ったおまえの方にある」 と。
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