28人が本棚に入れています
本棚に追加
(ふんっ、冗談じゃない。)
「どうしても家が欲しい」
反対する宏次に、何年も何年もおもちゃをねだるように言い続け
根負けした宏次がしぶしぶ承諾すると、住宅販売業者のうまい話に乗せられて
こんな大きい家を建ててしまった。
「私も働いて一緒にローン返していくから」
その言葉も嘘だった。
「パートでもいいから働いて助けて欲しい」
商業高校を卒業して数字に強い宏次が危機感を抱いてそう言うも、持病を理由にして働こうとしなかったのだ。
食い扶ちを減らして先に借金を返さないとーと思った宏次が、妻の実家に
「しばらく妻と子供を預かって欲しい」
と頼むと、妻の嘘を信じた妻の両親が宏次を罵りにやってきたのだった。
宏次の両親も交えての話し合いを何度も行った。
その結果妻の嘘はばれ、更に宏次の母に金の無心までしていたことが発覚した。
宏次は途方に暮れた。
(お母ちゃんのお金までむしり取ろうとしてたのか)
怒りで、愛情も人情もいっぺんに吹き飛んだ。
家の頭金は、双方の親に援助してもらっている。
だから、結果的に宏次は、妻の両親に借金しているということになる。
借金返済は、すべて宏次が行うことになった。
「ボクは何のために生まれてきたのかな。
一生、お金の返済に追われて死んじゃうのかな」
DVDに集中できないまま、宏次がつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう!