28人が本棚に入れています
本棚に追加
宏次は高校を卒業した後、銀行に勤めた。
ほんとうは別の道を歩きたかったのだが、苦労している両親に
恩返しがしたかった。
そして両親に、家を購入することを勧める。
「お父ちゃん、家を買おう。ローンはボクも助けるから」
宏次は、20代の頃から
「借金を返す」
という生活を経験していた。
だから借金はこりごりだった。
親の家は、「長男」の責任の気持ちゆえ払った。
それ以上家を購入する必要はないし、両親とはいずれ同居するのだから
まさか、自分が新築のローンを組むとは思いもしなかった。
独身の頃は親の家のローンのために頑張り
今は自分の家のローンに苦しむ。しかもあと25年も誰の助けもなしに。
いざとなったら自殺するしかない。
宏次の繊細な気持ちはそこまで追い詰められていた。
だから、恋愛なんてする気なんかさらさらなかった。
しかし、今は優奈の存在が宏次のこころを揺さぶっている。
(ボクに借金さえなければ告白する勇気ができるのに)
「会えない」という状況は、さらに気持ちを熱く燃え上がらせる。
宏次もまた、1年に3日間の片思いを自分だけの楽しみだと自分に言い聞かせていた。
最初のコメントを投稿しよう!