28人が本棚に入れています
本棚に追加
一方、夫のほうはそんな優奈の気持ちに薄々気づいていた。
しかし、夫は優奈を愛していた。
大事だった。
「イケメン」なんてことを1度も言われたことがない。
そんな夫ー和也には優奈が自慢だった。
どこに連れて行っても
「まぁ可愛いお嫁さんを連れて」
と言われる。
一緒に歩くと、すれ違う男の目線が優奈を追う。
そして和也を見ると、悔しそうな目で和也をにらむ。
和也は有頂天だった。
結婚して3年目のお正月、優奈に1通の年賀状が届いた。
差出人は、優奈が愛していた男性からだった。
(もしかして、結婚の通知?)
どきどきしながら裏返すと
「あけましておめでとうございます」
と、印刷された殺風景なはがき。
(なんだ)
とほっとした優奈の目に飛び込んできたのは彼の直筆の文字。
「何か困ったことがあれば言ってこいよ」
この文字を見たとたん、優奈のこころは激しく揺れた。
そして、そこに書かれていた携帯電話の数字を指でなぞり
そっとかばんに入れた。
数日間、いや、数週間優奈は迷った。
(この気持ちは封印しておかなきゃいけない)
その思いで揺れた。
結婚して3年。
優しい夫に対して、「情」が生まれつつあった。
最初のコメントを投稿しよう!