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母親から否定されて育ってきた優奈は「情」を知らなかった。
和也から注がれる優しいまなざし。
それは、まさしく「愛情」だった。
優奈がヒステリーを起こしても
「俺は優奈に完ぺきなんか求めているんじゃない。
明るい優奈でいてくれればいいんだ。家事なんかしなくても
俺も出来るし、お弁当なんか作らなくてもいい。
優奈は完ぺき主義すぎるんだ。力を抜いて。仕事がストレスなら働かなくていいんだ」
そう言って、泣きじゃくる優奈を諭してくれる。
(この人の人間性は本物。こんなに優しい人を私は知らない)
お金持ちほどでもないが、優奈もブランド物にも宝石にも興味がなかったから
優奈が外に働きに出る経済的理由はなかった。
優しい和也との県外での生活は、穏やかに過ぎていた。
愛していると思っていた彼とのことは、思い出になっていたはずだった。
なのに、また優奈のこころに波が立ち始めていた。
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