第四章:優奈の状況

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母親から否定されて育ってきた優奈は「情」を知らなかった。 和也から注がれる優しいまなざし。 それは、まさしく「愛情」だった。 優奈がヒステリーを起こしても 「俺は優奈に完ぺきなんか求めているんじゃない。  明るい優奈でいてくれればいいんだ。家事なんかしなくても  俺も出来るし、お弁当なんか作らなくてもいい。  優奈は完ぺき主義すぎるんだ。力を抜いて。仕事がストレスなら働かなくていいんだ」 そう言って、泣きじゃくる優奈を諭してくれる。 (この人の人間性は本物。こんなに優しい人を私は知らない) お金持ちほどでもないが、優奈もブランド物にも宝石にも興味がなかったから 優奈が外に働きに出る経済的理由はなかった。 優しい和也との県外での生活は、穏やかに過ぎていた。 愛していると思っていた彼とのことは、思い出になっていたはずだった。 なのに、また優奈のこころに波が立ち始めていた。
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