第八章:同居

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優奈も話を聞いて欲しかった。 同じ悲しみを持つ人と、悲しみを分かち合いたかった。 和也の両親は健在だ。 だからなのか、優奈の悲しみを理解できないのだろう。 「あぁぁ、釣りに行きたいなぁ」 などど無神経な言葉を発する。 優奈は、宏次に会いたかった。 しかし、実行には移さなかった。 (始めてはいけない。亮太と同じになる。  始めたら、必ず終わってしまう。宏次さんとはこのままがいい) そうしてまた、イベントの季節がめぐってきた。 もちろん、今年も参加の意志は伝えていた。 当日。 優奈の姿を見て宏次は驚いた。 少しふっくらしていた頬がげっそりっとし、ひとまわり小さくなったように見える。 もともときゃしゃだったが、手足も細くなってしまっている。 (いったい、何キロ痩せたのか・・・そんなに悲しみが深いのか) 宏次は優奈を見るのが辛かった。 優奈は辛そうに自分を見る宏次のこころの中を悟った。 (宏次さんもお父様を亡くされて、本当に辛かったんだわ) イベント最終日、宏次は優奈に声をかけた。 「お茶でも飲みませんか?」
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