第二章:きっかけ

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宏次のコミュニケーション能力の高さによって、数々のイベントは成功し また、少しずつ規模も大きくなっていった。 何より、継続させているパワーはすごいことだと優奈は思っている。 「好きなことにはものすごく夢中になる、しかし一方で飽きっぽい」 という性格は、数々のイベントを計画することに向いているかもしれない。 毎年呼んでもらい、たった3日間の、それも挨拶するだけの間柄。 優奈はそれだけで満足だった。 こころの中でときめいているだけなら何も、誰にも迷惑はかけないのだから。 イベントは海辺で開催されるので、宏次はいつもサングラスをしている。 紫外線がまぶしいのだろう。 そして、優奈のブースの前を1日に何度も通り過ぎる。 歩いているときには声をかけてくれ、 自転車で颯爽(さっそう)と行き過ぎることもある。 優奈はそんな宏次を気づかれないように目で追っていた。 宏次の姿を目の端にとらえると緊張が走り お客さまへの対応も精一杯な笑顔になるのだった。 いつも。 毎年。 1年の間3日間だけの、片思いの彼との再会。
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