第八章:同居

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「おはよー。よく寝ているみたいだから起こさずに出勤するよ。  優奈さん。まだお父さんのこと癒えてないんだね。  大丈夫。たくさん泣いていいよ。ボクでよかったら話聞くよ。  昨夜は泣き疲れて寝ちゃったからボクのパジャマを着てもらったよ。  ゆっくりして行ってね。鍵は郵便受けの中に入れておいてください。  あ、朝コンビニ行って買ってきた。よかったら使ってね」 テーブルの上には小さなお鍋とお茶碗とおわん。 ちゃんと食卓カバーでっほこりよけしているマメさ。 ふたを取ってみるとお味噌汁。 (これを食べてってこと?) ガスコンロで暖めて一口。 「美味しい」 独り言が出ていた。 たまねぎとじゃがもと卵。そして宏次の好きな豆腐。 常々、宏次が 「お味噌汁の王道だ」 と口にしている具剤だ。 昨夜は泣き疲れて寝てしまうほど号泣した、らしい。 (宏次さんに迷惑かけちゃったな・・・) コンビニの袋の中には、歯ブラシと1泊セットと書かれた化粧品。 「宏次さんって本当に気が利く人だな・・」 (慣れているのかな?) との思いも胸をかすめたけれど、そう思いたくなかった。 なぜなら、友人が開いている店にドーナツを差し入れたとき 「一緒に食べよう」 とコーヒーを入れてくれ一時を過ごしたのだが、 自分と優奈が食べたドーナツの包み紙を自分のジーパンのポケットに入れたのだ。
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