第八章:同居

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しばらく泣いた後、宏次が寝ていたベッドに入ってみた。 宏次の匂いがする。 宏次に抱きしめられているみたい。 (どうしてこんなに居心地がいいのかしら) 優奈はまた少し、まどろんだ。 いつまでもいたいけれど、いられない。 現実が優奈を待っている。 着替えを済ませ、台所を片付け身支度を整えた。 もう13時になろうとしていた。 その時、聞きなれたバイクの音が聞こえてきた。 宏次のバイクの音だ。 「帰ってきた!」 窓に駆け寄り、庭を見る。 宏次がバイクのエンジンを切り、優奈に手を振っている。 フルフェイスのヘルメットの中の目は笑っている。 「ただいま~。なんだか仕事する気になれなくて。  まだいてくれたら嬉しいなと思って帰ってきた。会社休んだ」 まだ庭にいるのに、ご近所さんに聞こえるのに無邪気に言う宏次。 「お・おかえりなさい」 優奈は返事するのがやっとだった。 (昨夜のこと謝らなくちゃ。) 玄関から入ってきた宏次に 「昨夜はごめんなさい。号泣してた?」 と聞いていた。 「うん。優奈さん、我慢してちゃダメだよ。  ボクでいいなら毎晩でも話聞くよ。よく眠れた?」 こくん、とうなずくのが精一杯だった。 「さ、ご飯でも食べに行こう!美味しいスープカレーのお店があるんだ!」 子供のような表情を見せ、宏次が笑っている。 優奈も笑顔になり 「うん!」 と返事していた。
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