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しばらく泣いた後、宏次が寝ていたベッドに入ってみた。
宏次の匂いがする。
宏次に抱きしめられているみたい。
(どうしてこんなに居心地がいいのかしら)
優奈はまた少し、まどろんだ。
いつまでもいたいけれど、いられない。
現実が優奈を待っている。
着替えを済ませ、台所を片付け身支度を整えた。
もう13時になろうとしていた。
その時、聞きなれたバイクの音が聞こえてきた。
宏次のバイクの音だ。
「帰ってきた!」
窓に駆け寄り、庭を見る。
宏次がバイクのエンジンを切り、優奈に手を振っている。
フルフェイスのヘルメットの中の目は笑っている。
「ただいま~。なんだか仕事する気になれなくて。
まだいてくれたら嬉しいなと思って帰ってきた。会社休んだ」
まだ庭にいるのに、ご近所さんに聞こえるのに無邪気に言う宏次。
「お・おかえりなさい」
優奈は返事するのがやっとだった。
(昨夜のこと謝らなくちゃ。)
玄関から入ってきた宏次に
「昨夜はごめんなさい。号泣してた?」
と聞いていた。
「うん。優奈さん、我慢してちゃダメだよ。
ボクでいいなら毎晩でも話聞くよ。よく眠れた?」
こくん、とうなずくのが精一杯だった。
「さ、ご飯でも食べに行こう!美味しいスープカレーのお店があるんだ!」
子供のような表情を見せ、宏次が笑っている。
優奈も笑顔になり
「うん!」
と返事していた。
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