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宏次は優奈に合鍵を渡してくれた。
「いつでも魔法のベッドで寝ていいよ」
優奈が宏次のベッドを「魔法のベッド」とあまりに褒めるので作ってくれたのだ。
優奈は宏次が帰宅する前に家に入り、料理を作る。
そしてお風呂に入り宏次の帰宅を待つのだ。
少しずつ、優奈の持ち物が宏次の部屋に増えていた。
ただ、まだ一線は越えていない。和也に気づかれたら信じないだろうが。
いつも優奈が酔い始め、くすん、くすんと泣き出し
父を思い出してはどんなに淋しいか、悲しいか宏次に訴え
泣きつかれて眠ってしまうというパターンだ。
宏次の手で導かれてベッドまで歩くときもあれば、
宏次にベッドまで運んでもらうこともある。
優奈が目を覚ませば、宏次はもう出勤していて食卓の上には朝食が出来ている。
ヨーグルトとキウイとトマト。そして野菜ジュース。
宏次はいつも冷蔵庫にそれを準備して、お皿に切ってくれている。
そして優奈はそれらを食べ、宏次のベッドでまどろみ、
宏次の晩ご飯の支度をして家に帰る―――
これが習慣になった。
「友達の家で泊まった。実家に泊まった」
優奈は嘘つきになった。
そしてそれを和也は受け止めていた。
信じているようにも見えたし、関心がなさそうにも見えた。
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