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ドライブしながら宏次のうんちくを聞くのは楽しい。
その車が軽四でも暖かい。
「優奈、サンゴを見に行こうか?」
「え?寒いからやだ」
「冬の今のほうが、海が透き通って海岸からサンゴが見やすいんだ」
優奈の返事を待たず、ハンドルを切る宏次。
宏次のこんな突然の変更はよくあることだった。
たこ焼きを食べようと話して、たこ焼きやに向かっているのに
滝を見に行ったこともあった。
優奈はこういう予定の変更は嫌いだった。
その日は映画を見に行こうとしていたのだ。
優奈の頭の中は、(どんなストーリー展開かな?)で一杯だった。
なのに宏次はおかまいなし。
当然、優奈はほっぺたをふくらませる。
「ほら、着いたよ」
海を見下ろすほどの高台だった。
ここから、海中が見える岬まで歩くと言うのだ。
「やだ!高いところ怖い!」
高所恐怖症の優奈は嫌がったが、
「大丈夫。手をつないであげるから」
と、強引に連れて行かれた。
あまりの高さに足がすくむ。
「ほら、あそこにサンゴが見えるだろう?」
言われても下を見る勇気もない。
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