第八章:同居

30/34

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
優奈は黙っていた。 こころが激しく揺れていた。 (始まってたの?嘘。このままでいい。でも、女性として愛されたい!) 女は最期の恋人になりたがり、男は最初の恋人になりたがる。 (誰の言葉だったけ・・・) ふたり無言のまま、車は宏次の自宅に着いた。 宏次はすばやく運転席から降り、助手席の優奈に手を伸ばす。 「さあ、寒いから入ろう」 優奈はうながされて、お姫様のように手をつながれて家の中に入った。 自宅の中はほんわかと暖かかった。 どうやら暖房が入っているようだ。 手をつないだまま、寝室へ向かう。 宏次は1歩1歩。優奈は半歩づつ。 宏次は優奈のペースに合わせてくれた。 寝室も暖房が入っていた。 優奈のコートを宏次が脱がし、優しくキスをしてくる。 長く、優しいキスだった。 優奈は聞かずにはいられなかった。 陳腐な言葉だけれど、もう、「別れ」は嫌だった。 「・・・・・こうちゃん、どんなカタチであっても、心は離れない?」 「もちろん。ボクのお姫さま」
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加