28人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
それからの日々に何も変化はなかった。
優奈の表情、体つきがどんどん女らしくふっくらしてきたこと以外は。
和也も気づいているだろうが何も言わない。
宏次は、自分の気配を消しているつもりのようだったが
もう優奈は、和也から「社会的に抹殺してやる!」とまですごまれているのだ。
それを優奈は宏次に言い出せないでいた。
ただ、季節が過ぎていった。
優奈は宏次を必要とし、宏次も優奈の存在に励まされた。
宏次には家のローンという大きな借金があったし、前妻との間に子供もいた。
もしかしたら、破産宣告をしなければいけないかもしれないとも思っていた。
優奈に離婚をさせ、宏次と一緒にイバラの道を歩ませるのはしのびなかった。
そんなことを優奈に打ち明けられるはずがなかった。
ふたりは、ふたりの時間を過ごし、お互いの気持ちを大切に過ごしていった。
もちろん、会えない時もある。優奈の体はひとつなのだ。
なんどか和也に離婚を切り出していたが、ことごとく無視された。
強行突破も考えたが、40歳を過ぎると、それはとても勇気が必要なのだった。
(若いっていいな。将来がばら色に染まってて)
優奈は空を見上げてはため息をつく。
優奈も宏次も、お互いを思いやるほど、将来を口に出せないでいた。
ふたりは、ふたりだけの時間を過ごし、お互いの気持ちだけを大切に過ごしていった。
最初のコメントを投稿しよう!