第八章:同居

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これが正解なのかどうかは分からない。 また、どんな夫婦の生き方が悪いのかも。 ある日、帰宅した宏次に 「こうちゃん、おかえりんご♪」 と言って抱きついたことがあった。 宏次は嬉しそうな顔をして 「ただいマンゴー」 と返してきた。 それがおかしくて、ふたりで笑ってしまった。 こんなたわいもない、普通のことが幸せなのだ。 「何もない」ことがいちばん幸せなのだと、優奈は宏次に教えてもらった。 いつ、何が起きるか分からない。 ――― 一緒にいて楽しいひとより、一緒にいないと淋しいひとを選ぼう ――― (これも誰かの言葉だったっけ)と思いながらふたつの家を行き来する優奈。 和也の待つ家に帰るとき、宏次のことを考えて涙を流す自分 宏次の待つ家に行くとき、和也のことを考えて何の感情も湧かない自分 ――― 一緒にいて楽しいひとより、一緒にいないと淋しいひとを選ぼう ――― 優奈の気持ちは固まっていった。                                       完
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