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「恭本に逢えて良かった。ありがとう」
「あ…」
「うちに、帰ってみる」
真山がへへっと笑った。
「…あぁ。そうしな」
「うん」
俺はペダルに足を掛ける。
同じ団地なんだから送ってやれば良かったはずなのに、言い出せなかった。
「ちゃんと帰れよ」
「うん」
「じゃあな」
真山を置いてペダルを漕ぎ出す。
次の角で国道に出、俺は国道沿いをひたすら飛ばす。
平坦で滑らかな道なはずなのに息が切れるようにドキドキと心臓が脈打つ。
『恭本のこと、考えていたよ?』
『恭本に逢えて良かった。ありがとう』
頭の中を巡る言葉を振り切るように俺はペダルを踏み込んだ。
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