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9月─賭け
新学期が始まった。
真山への想いに気付いたところで真山は他校に通っているので俺の日常にはこれと言って変化はなかった。
強いて言えば、水曜日の下校が待ち遠しくなったことくらい。
そう。悔しいくらい変化がないんだ。
こんなにも水曜日を待ち焦がれているのに、どういうわけか2学期に入ってから真山はいつもの坂に現れることがなかった。
1週目2週目は今までのペースからまぁそんなこともあるかな、という程度に思っていたけれど、3週目にも会えないとなると次第に不安になる。
俺の気持ちに気付いて避けてる?─
まさか。俺自身でさえも自分の気持ちに気付いてなかったのに?
4週目の水曜の帰り道、坂が近付いてくる。
そこにやはり真山の姿がないのが分かると、自分の予想以上に落胆している俺がいた。
こんなにも俺の中で真山の存在が大きくなっていた。
これが『恋』なんだろう…
真山のいない坂を上り、国道を渡り、ぼんやりそんなことを考えながら歩いているうちに団地に近付いてくる。
自宅へと曲がる角の少し手前、俺はふと歩いて来た道の先に眼を向ける。
この道は駅へと真っ直ぐ続いている。
真山が毎日使っている駅へと。
「あ…」
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