ゆりかご

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うっ…何か夢を見てた気がする… そうか、僕は会社帰りに電車に乗って座ったまま寝ちゃってたのか。 電車の揺れは疲れている身体には心地よく、ゆりかごに揺られる赤ちゃんの気持ちが分かる気がする。 「次は~春草~春草です。」 まずい…とっくに最寄り駅を過ぎてる。 次で戻れば30分程で着きそうだ。 さて、降りるかな…あれ?何かお腹が熱い… 見ると腹に深々と包丁が刺さってた。 何で乗り込んできた奴、包丁なんか持ってんだよ。 薄れる視界から閉まる電車のドアが見える。 「俺は死にたいんだよ!お前ら全員殺して死刑になってやる!」 僕らが何をしたっていうんだ… 他の乗客の痛みに苦しむ悲鳴が聞こえる。 うとうとしなければ、巻き込まれなかったのかな… くそっ…だんだん瞼が重くなってきた。 電車はゆりかごの様に揺れながら次の駅を目指す。 けど、僕らにとっては死へのゆりかごだ。 死にたくない…死にたくないよ… うっ…何か夢を見てた気がする…
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