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思えば、僕が君を好きになったのはあの瞬間だった。
中学生の時の、確か教室移動の時だったっけ。
とにかくあの時のあの瞬間から、僕は君に夢中になったんだ。
僕は生来流されやすい性格で、何かを勧められると簡単に気になったりするような人間だった。
おまけに年相応に愚かで、ちょっと優しくされただけで好きになったりもして。
今にしてみれば恥ずかしいような、むしろ可愛らしいような。
そんな複雑な感想が浮かぶ少年期だったけれど、それなりに充実していたと思う。
友達にお前〇〇のこと好きだろなんて聞かれたら、全く意識していなかった人でも少しずつ気になったりして。
とにかく、怒らないで欲しいけれど、実は君を好きになった経緯もそんな感じだったんだ。
正直に言うと、中学に入りたてはクラスメイトってくらいの認識しかなくて、名前も読み間違えている有様だった。
……ごめん。本当にごめん。
でも、調子の良いことかもしれないけれど、君の名前を改めて知った時、凄くいい名前だなと思ったんだよ。
――言い訳紛いはここで止めておくとして、とにかく僕の君に対する認識はそんな感じだったんだ。
その時の僕には小学校の時から好きだった人がいたし、というか君が僕に対してどんな心境を抱いていたかは分からないけれど、とにかく接点がほぼないまま一学期は過ぎた。
そうして特に意識しないまま二学期が訪れた。
……その頃かな。僕が現実を知ったのは。
今まで言ってなかったけれど、僕が昔好きになった人は皆がみんな、面白いようにある一人の男のことを好きになった。
明るくて人当たりのいい、僕と正反対のやつ。
こうして言葉にしただけでも僕が勝てる要素はないけれど、当時は結構憎らしかったんだよ。
……まあ、その当時好きだった人もその男のことを好きだって噂が耳に入ってね、僕は勝手に好きになって結局勝手にフラれたんだ。
笑えるよね。本当に笑える。むしろ笑って欲しいくらいだ。
……本当に。
まあそんなこんなで僕は失恋した訳だけども、未練というのがしつこくて、諦めることができなかったんだ。
自分からは何もアクションを起こせないくせに。
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