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いばら姫
「…っ痛……ここは…?」
そこは、大きなお城の中だった。
古風な雰囲気で、もう使われていないかのように静かだった。
ただ、不思議なことに、空気は埃っぽいことはなく…
《ただ、今、誰もいないだけ。》
そんな空気感が、伝わってくる。
恐る恐る城の中を歩いてみると、自分の足音がコツン、コツンと響き渡る。
そして、大広間に出てみれば…
「ひっ……」
人が、固まっていた。
マネキンのように、ピクリとも動かない。
一瞬、死後硬直なんて言葉が思い浮かんだけど…まあ違うだろう。
血が流れていたり、それが腐っているようなこともなく…変な匂いもしなかった。
これは…一体…。
「なにしとるん?」
「…わッ、え?!」
誰もいないと思っていたので、急に声をかけられてとても驚いた。
振り返れば、階段の上に男の人がいた。
「これから、王子が来るさかい。こないな所におったらあかんで。」
「え?王子様?…貴方は、だれ?なんでみんな固まってるの?どうなってるの?」
「そないにようさん質問せえへんで。とにかく、ここにおったらあかん。」
そういうと、彼は私の手を引き柱の影に隠れた。
小窓を見上げてみると…なんとこの城の周りはイバラで覆われており、正面の扉以外の入り口は全て塞がれているようだった。
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