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気がつくと俺は図書室ではなく動物園の入り口に立っていた。
アーチ状になっているゲートにZOOの文字と派手な色をした動物達が描かれており、その先が動物園だと親切に教えてくれる。
「蓮、早く行こうよ」声の聞こえた方に首を向けると、そこには白を基調としたワンピースに身を包んだ玲美が立っていた。
制服とは違う、今まで見たことのない姿に心臓がどきりと動く。
「……お、おう? 」
「なんで疑問形なの? 」玲美はふふっと微笑むと、ゲートの方へと足を向ける。
なんで俺玲美とこんな所にいるんだ?
俺は図書室にいた筈―――
「ねぇってば」下からひょこりと心配そうな表情を浮かべた玲美が現れる。
「大丈夫? 熱中症とかじゃないよね? 何か飲み物買ってこようか? 」背伸びをしてぺたぺたと俺の顔を撫でくり回す。
「あ、あぁ大丈夫。少しぼーっとしてただけだ」恥ずかしくて、その手を避けるように伸びをする。
……顔赤くなってないよな?
「今日暑いから気を付けないとね。大丈夫なら中に入ろうよ」玲美は俺の手を取ると、ぐいぐいと引っ張る。
そのまま俺は玲美とゲートを潜った。
引っ張られるまま気がつくと、白黒のツートーンカラーが目を引くシマウマの飼育スペースまで来ていた。「おーシマウマだ」
引っ張られ歩いている内に、夢でも見ているのだろうという結論にたどり着いた俺は冷静だった。
「おぉ、派手だなぁ」心臓の鼓動も収まり、普通に話す。
「あれ模様一匹一匹違うんだって」看板とシマウマを玲美は交互に見ながらそう言った。
「へぇ、そうなの? 」
「らしいよー」
なんて他愛ない会話をしながら俺がシマウマを幾ばくか眺めていると、玲美は手元のパンフレットを眺め「あ、次は触れあい広場だって! 行こう!」俺の手を引く。
また引きずられるようにして俺は触れあい広場へと足を運んだ。
「可愛い! 」
「……せっかく触れあい広場来たのに山羊に人参やってるだけじゃないか。ウサギとか良いの? 」俺は膝の上にウサギを乗せながら、隣の柵にいる目付きの悪い山羊を愛でている玲美に問いかける。
「こっちのが可愛い! 目元蓮にそっくり! 」
「……それ聞いた俺はどう反応すれば良いんだ? 」
「笑えば良いと思うよ」
「……どっかで聞いたことあるような事言いやがって」
「気のせいだよー」
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