ユリちゃん

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 あれは確か中学二年になったばかりの頃。 あの日私は、剣道部の練習が終わって、一人校舎裏でお茶を飲みながら休憩していた。 ここは私のお気に入りの場所だった。 先生に気付かれないように、一人になりたいときはいつもここに来ていた。 そこになぜかあなたがやって来た。私の居場所は私の部活仲間に聞いたらしい。 「ユリちゃん、僕が何でわざわざここに来たのかわかる?」 あなたは私にそう聞いた。私はその答えがわからず、首を横に振る。 目が合うと私から目を逸らして、あなたは遠くを眺めながら小さな声で言った。 「それは・・・ユリちゃんに告白しようと思って。」 と。何の告白かわからず首を傾げていると、あなたは真剣な顔で私を見つめた。 そして、 「ユリちゃんが好きだよ。付き合いたい。」 とあなたは言った。しばらく静寂に包まれていた。鳥の鳴き声だけが聴こえる、あの静かな二人きりの時間を私は忘れたことはない。 その時の私は何も考えられず、必死に優しい言葉を探していた。 あなたを傷つけない、これからも友達で居られるようなそんな魔法の言葉を。 けれど、動揺している私にはそんな言葉思い付くはずがなかった。 先に口を開いたのはあなたの方だった。 「ごめん、ごめんね。ユリぢゃん・・・。」 あなたは肩を窄めて言った。 私は何か声を掛けようとしたが、あなたはどこかへ走り去って行ってしまった。 追いかけることなんてできなかった。私があなたを傷つけてしまったのだから。
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