ユリちゃん

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 静かな部屋の中で、あなたは話をしてくれた。(と言っても私は耳が聴こえないから、パソコンに文字を打ってだけれど。) 高校のとき、人伝てに私が難病になったことを知り、私の病気の治療法を見つけるために医者を目指すようになったと。 そして次に、覚えていないかもしれないけれど、とあなたは言った。 私にまだ記憶障害があったときにもこの話をしたことがあるらしい。 そしたら私が「ありがとう。絶対治してね、先生。」と言っていたと。  長い年月を経て、医者と患者の関係になってしまった私達。 でも、あなたが医者になった理由が私であることが嬉しかった。 私の命はそう長くはない。けれど、あなたの人生はこれからで、これからも沢山の患者を救うことになるだろう。 私はその様子を遠くからいつまでも見守っているから。 そして、あなたが幸せになることを心から祈っている。
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