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お城の中は薄暗く、燭台に灯る明かりだけが王子を姫のもとへと導いてくれます。ときおり、壁に張り巡られたイバラのツタがうごめいており、成長し続けていることに王子は恐怖を覚えました。
灯りを頼りに進んでいくと、ツタが無数に絡みついた扉へと突き当たりました。
おそらく、ここに姫がとらわれているのでしょう。そう思った王子は剣を引き抜き、扉に絡みついたツタを切り裂いていきました。
ギィ……。
扉は重たい音を立てながら王子の手によって開かれるとそこにはイバラに抱かれて眠る美しい姫君がおりました。
「なんと、美しいことか……」
絹の糸のように輝くブロンドの髪、いまにも消えてしまいそうなほど透き通った真珠色の肌、小さな唇はふっくらとしていてリンゴのように赤い。
「姫を助けなければ」
あまりの姫の美しさに我を忘れていた王子は、自身が何をしにここに来たのか思い出し、彼女を抱くイバラを剣で切り裂きました。
「あぁあぁあぁあぁあぁ!?」
突然、姫が苦しみだしたのです。
天井を突き破ってしまいそうなほどの絶叫が響きわたります。
「ひ……ひ、め?」
突然のことに驚いた王子は姫から数歩、後ろに下がりながらも気遣うように声をかけました。
すると、姫の美しい瞳が王子に鋭い眼光を向けたのです。
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