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「貴様か……私の眠りの邪魔をしたのは……!」
これが噂の美しい姫君なのだろうか。まるで、彼女こそがこの城の魔物のようだと王子は思いました。
姫が王子に近づいてくるたびに、王子は後ろへとさがります。けれども、壁が王子の行く手を阻み、あまつさえ壁に張り巡らされたツタまでもが王子の逃げる道を塞いでしまいました。
まるで、ツタに意思があるかのようなその動きに気をとられてしまった王子は、両手と両足をツタに絡めとられてしまいました。
「いたい……いたいのよ」
姫がそう呟きながら王子へと近づきます。そして、王子は気づいてしまいました。
姫の肩側……王子が切り裂いたイバラの場所からポタリ、ポタリ、と赤い雫が落ちていることに気がついてしまったのです。
「ひ、ひめ……あなたは……いったい!?」
「うるさい…………うるさいのよ!! あなたも、門の外にいる連中も、私の城に侵入してくるヤツらもみんな……私の眠りを邪魔しないで!!」
その瞬間、姫の口が大きく開き……パクリと、王子を丸呑みにしてしまいました。
最期になにも喋ることもできないまま、お人好しな王子は姫の中へと消えてしまいました。
「はぁ、やっと静かになった。これで眠れるわ」
姫は、ひとつ欠伸をすると再びイバラに抱かれてスヤスヤと気持ちよさそうに眠り始めました。
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