21人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「そ、そうね……」
刹那は咳払いをした。ここは何としても、永遠を丸め込まないと。
「たしかに永遠の言う通り、オーディションは自分自身の力で受からなきゃ意味がないわ」
永遠が力強く頷く、純粋で真っ直ぐな穢れを知らない瞳で姉を見つめて。
「でもね、現実は甘くないの。今回のオーディション、どうして受けられたか知ってる?」
「どうって、荒木マネージャーが取ってきてくれたんじゃ……」
荒木早紀は遙香の前に刹那のマネジメントを担当していた。
「そう、早紀おねえちゃんが苦労して取ってきてくれたの。オーディション自体、誰もが受けられるわけじゃない。ウチの声優部門は、あたしと永遠しかないけど、これが数十人抱えた事務所だったらどうなると思う?
それ以前にオーディションにも時間とお金がかかるから、制作者側も懇意にしている事務所を優先させるわ」
「それは……」
永遠の表情が少し曇った。
最初のコメントを投稿しよう!